「アニメーションに音響効果と選曲は欠かせないぜ!(後編)」の巻

TVアニメ『ONE PIECE』制作に欠かせない音響効果と選曲について前回お届けしましたが、
その後半戦でございます!
音響効果の新井秀徳さん、選曲の神保直史さん、お2人の仕事について聞くはずが…(笑)
まぁ、楽しんでくれ!


新井:そうだな、僕の若い頃からのポリシーは、絶対音感の人を不快にさせるような変な不協和音にならない音を目指す事!カンタンに言うと音楽とのマッチングかな!
例えば劇中の曲のキーがAコードだとしたら、その範囲内に合う音を作る。
ぴったり合いすぎても気持ちが悪いんだけど…まぁ、こればっかりは感覚の問題なんやけどね!!

勝平:へぇー!そんなことも考えるんだ!

新井:それと、子供に悪影響の出ない音かな。
僕が幼い頃は、TVアニメを見てると違和感がある事が多かったんだよね!
父親が色々楽器を持ってたから、触って遊んでいたせいか、音に敏感だったのかも。

勝平:新井さん、最初は何系を目指していたんですか?

新井:デザイン・美術系!

勝平:美術!?ミュージシャンじゃなくて!?

新井:ミュージシャンの夢は中学校の時に諦めた(笑)
姉ちゃんにパコーンって頭叩かれて、「変な夢見たらアカン。ちゃんと勉強しな!」って言われて、目が覚めて勉強しました(笑)

勝平:それで美術!絵も描けるんですか!?

新井:絵はちっちゃい時から好きで、工作とかも好き!
今でも、もの作りにしか興味なし!
ほんで、上京して、TV・映画関係の学校に行ったんやが…。
ホンマは特撮の美術とかCMディレクター、あと舞台美術とかの方に行くつもりが、卒業間近に東映の美術に就職が決まって。台本まで頂いたのに、初出社の当日が、大学のサークルの演奏会とだぶってて…キッチリ演奏してました!ハハハハハ!!
その後、求人のボードに「イシダサウンドプロダクション」とあって、「サウンド」だけに目がいって音楽関係の会社だろうと思って行ったら、アニメのSEを作る会社だった!そこから僕の転落人生が始まるのです(笑)

勝平:すごいなぁ(笑) 効果音の話を聞こうと思ってたのに新井さんの半生を聞くことに(笑)
話をちょっと戻して、効果音の話にすると、だいたい30分のアニメを作るときに、平均してどれくらいの音を用意するというか、どれくらいの音数を使うんですか?

神保:まぁ、そうですね。話の内容によって違いますね。

新井:アクションものとかは多くなるとは思う。動きが多いほど音も多い。
あと、効果音っていったらセリフと音楽以外の音全部だから。
特に僕の場合は、『ONE PIECE』でもそうやけど、巨大生物とか出てきたら、めんどうなやつはやってくれって…。君たちはあんまりやらないじゃん!?

勝平:動物の声もやってるんですか?(笑)

新井:若い時から、動物の声はすっごく多いよ!『Dr.スランプ』の猫とか蛇とか。
あと、『ドラゴンボール』の大猿。あれも僕の声なんやけど。

勝平:えっ!!あれ新井さんなの!?

新井:そうだよ。あれは僕の声を加工したものに、色々な音をダブらせて作ってんのよ!

勝平:へぇー!そうなんだぁ!
そっか、今だったらインターネットで鳴き声を引っ張ってこれるけど…。

新井:そうそう。でも、そんな事したらプロとして失格やな!シンセサイザーなんかより、人間のだせる音の方がすごいやろ。まずは口で表現出来ないとアカンわなぁ~。
『ONE PIECE』だと何やろ。色々あるけど…あっタコのアレ。スルメだ!
タコやけどスルメ!なんのこっちゃ!アレの声もそうです。

神保:でかいやつは大体そうですよね(笑)

勝平:すごいな!思ったよりも仕事多いんですね!

新井:当たり前じゃ!『ONE PIECE』みたいな冒険モノは、メカとかも出てきたり、何でもアリやから、何から何まで、ものすごい大変!

勝平:そうですよね、動物の声もですけど、神保さんの「そげキングの歌」の演奏も…。

神保:そうですねぇ。

新井:いやアレはね、出来ない人ならやらないわけでしょ。
出来へん言うて、楽器弾けませんって終わりだけど、下手に出来てしもうたりすると、頼まれたらやってまうやん。なぁ?

神保:まぁまぁ(笑)

勝平:だってあれ、わしも大変でしたよ!
なんか台本に書いてあって、これ、曲作ってくださいって言われて、えぇ!って(笑)
でも何かの都合で今作ってくださいって言われて。
録音収録はおしてるわ、空いている時間にそげキングの歌考えなくちゃいけないわで、すげー大変だったんですけど。でも、それに音楽がついたものを聴いた時にものすごい驚いた(笑)

新井:あれは良く出来てた。僕も参加したかったが、劇場の仕込みで無理やった!

勝平:皆さんが聞いてくれてる「そげキングの歌」はここで作った。っていうね。

神保:このスタジオで作りました!(笑)

勝平:あと、これ聞きたかったのですが。
たまにオンエアを見たら「あ、切られてるなぁ」っていうアドリブとか時々ありますが、あれは…?

神保:そういうのってありますよね。
アフレコの時にこれは面白いリズムだなぁ、テンポいいなぁって思っても、音楽を合わせると、どうも面白くなかったり。
音楽をつけた時、笑いのリズムと音楽のリズムが合ってないとダメなんですよね。

新井:あるね、そういうの。これはよく演出が考えないとな。

神保:ですね。演出の中でも、音が合っていないと合わない。

新井:だから、音をイメージできる人のほうが、当然 演出やるなら大成すると思いますよ!!
画だけ作れてもアカンで~!

勝平:そうなんですね、やっぱり感覚は大事ということで!
おっと、続きは特別版で。

ONE PIECE.com特別版!!

ワンピースオフィシャルメールマガジン『グランドライン通信』では、音響効果の新井秀徳さん、選曲の神保直史さんのマル秘話をお届けしました。特別版では、お2人の『ONE PIECE』に関わった15年での印象的なことを伺いました!


勝平:アニメ『ONE PIECE』は15周年ですが、お2人は15周年で印象的だったことはありますか?

新井:15周年?長いなぁ~!!僕の作品みんな長いんやもん。

勝平:印象的だったこと「長い」(笑)。
いいことじゃないですか!

新井:エエことないわ!
あっそうそう 尾田さんお願い!甲板の芝生!早ようはずしてくれ~~~!
緊迫感があるシーンで芝生じゃ足音に表情が出ん!帆船に芝生とは…漫画じゃなりたつけど、アニメじゃ厳しいんじゃ!

勝平:15年やって一番印象的なものが、「甲板の芝生」って(笑)。

新井:あの甲板の芝生、今回ほら、芸術の。あの時外せばよかったやん!

神保:ジョーラに取ってほしかったんですね!

新井:そうそう。
あとはね、今まで色んな作品やってきたケド『ONE PIECE』のスタッフは一番良い!
居心地も!なんでか分かる?

勝平:いや、なんでですか?

新井:好き勝手させてもろてるから、ハハハハハ。
自分が年くったせいか、みんなやさしい!育ちがエエせいか、老人にやさしいねんな~(笑)
画が常に入っていれば言う事無し!!

勝平:神保さんはどうですか?

神保:2つあって、1つが5話目。

勝平:細かい!5話目ってどれだろ?わしはたぶん9話目からだから。

神保:まだ出てないですよね。5話目の前に総集編を作ってくれってあって!

勝平:5話目の前に総集編!?

神保:4.5話があったんです。

新井:そうだ!思い出した!

神保:僕は『ONE PIECE』が初めて携わった長い作品なので、4話でどうやって総集するんだろ…何を総集すりゃいいの!?って(笑)

勝平:そんなのあったんすか!?

神保:たぶんなんですけど、まだ水曜日の夜7時にやってた時に。
野球のはずが雨で番組が飛んで、うめなきゃいけなくなって。急に作った。

新井:急遽って結構あったのよ。アニメで急遽は中々出来へんで。

神保:まぁでも、それにも対応してかなきゃいけないですしねぇ。

勝平:(笑) もう1つは?

神保:あと1個、いいことは、みんなの誕生日をちゃんと祝う。
スタジオとかで。あと由里子さん(ロビン役)とかの出産日とか。
なかなかないじゃないですか、普通。
しかも今のアニメーションの現場ってみんな飲まないで帰るじゃないですか。

勝平:確かに段々減ってきましたね。

神保:普通にサラッと「あっ帰るんだぁ」と思ったんですけど、『ONE PIECE』は飲もうと思ったらすぐに集まりますもんね。

勝平:そうですね…昼から飲んでるときも(笑)

神保:昼から飲んでて夜にもう一回飲むんですよねぇ。

新井:昔からのフィルム業界の正しいあり方よ。

神保:正しいあり方だと思いますねぇ。

新井: 若い時はのめなかったけど、50手前でも飲めるようんなってよかった!!
神保君のおかげです(笑)

神保:押忍!(笑)

勝平:作品も冒険モノで王道なら、スタジオとか制作現場も王道を歩いてるぜ!っていう。

新井:『ONE PIECE』の現場は、一番飲みに行っとんちゃう?

神保:15年続いてる理由があるっていうことですよ。

勝平:「15年続いてる理由がある。」いい締めの言葉を頂きました!


勝平さん、新井さん、神保さん、ありがとうございました。
15年続いている理由がある…
これからも『ONE PIECE』はまだまだ続いていきますよ!
みなさん、今後の『ONE PIECE』をお楽しみに!

山口勝平さんに応援メッセージを送ろう! みんなからの激励や要望を大募集!!

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