★今回のポイント
・ライブ感あふれる絵柄の秘密は?
・写植ではなく手書きの文字を使った理由
・マンガにはない絵本ならではの魅力がある!
勝平:今回の「ウソップの、これはホントだ!」は前編に引き続き、好評発売中の『ONE PIECE』初の絵本『ONE PIECE picture book 光と闇と ルフィとエースとサボの物語』について、作者の長田真作さんと担当編集の服部ジャン=バティスト哲(以下バティ)さんにお話を伺っていきます!
左:勝平さん 中央:長田さん 右:バティさん
◆スピード命のカラーリングと、味のある手書き文字が見事マッチ!
勝平:この絵本は、どれくらいの期間で描かれたんですか?
長田:『ONE PIECE magazine』1冊分のエピソードは2~3日くらいです。加筆分(15ページ程)も含めると、今回の絵本にかかった時間は全部で2週間くらいかと思います。
勝平:ええーっ!?そんなに早いんですか?
長田:絵本の制作はスピード勝負というか、早く仕上げなければいけない事情があるんですよ。
勝平:気になりますね! それはどんな事情でしょう?
長田:私が描く絵本には水彩絵の具を使っているのですが、水彩絵の具はどんどん乾いて色のトーンも変わってしまうので、全体の色味を揃えるには途中で手を止めることができません。絵を描くだけではなく、色の制作も同時に行わなければならないので一息つく暇もないんですよね。
勝平:なるほど…、すごくライブ感のある制作なんですね。色といえばこの本はダークな色合いが印象的ですが、この色合いを出すための秘訣はあるんですか?
長田:黒を混ぜ込んでいくと、自然とダークな感じになるんです。水彩の中でも墨汁に顔料を足したような絵の具が6色ありまして、それを使っています。
勝平:色も自在に操って作っているんですね。ちなみに、文字はどのように書かれたんですか?
長田:別原稿に文字を書いて、後から絵の上に乗せる形を取りました。
勝平:そうなんですね!(手書きの原稿を見ながら)絵に直接書いてるものだと思っていました。
バティ:絵に乗せる文章は、下描きの段階で手書きの文字をもらっていたんです。当初は形が整っている写植の文字を使おうと思っていましたが、それよりこの手書き文字を絵にそのまま乗せたほうがマッチするんじゃないかと思って、ぼくから提案しました。
勝平:たしかに、絵との一体感がすばらしい!完全に絵の一部として溶け込んでいますよね。
◆想像で楽しむ絵本 原作と違った面白さ
勝平:全体はダークな色合いなのに三兄弟だけはあざやかな色合いで、灰色の世界から浮かび上がっているように見えるのがとても印象的です。周りににじまないよう、マスキング(描くものの周りをテープや紙で囲み、色が混ざらないようにする描画手法)しているんですか?
長田:いや、一発勝負ですね。マスキングを使ったら全然ダメになると思います。色のにじみもやってみないとわからないですからね。麦わら帽子がにじんじゃったりしたら、もう終わり。そうなってしまったら諦めて、イチから描き直しです(笑)。だからそのライブ感というか、一発勝負ならではの緊張感を保ちながら描いています。
勝平:カラフルなんだけどモノトーン。本当に、想像で楽しめる絵本だなと思います。
バティ:この絵本には、『ONE PIECE』の原作を読んでも見つけられない面白さをむき出しにしてほしい、というコンセプトもありました。「『ONE PIECE』の楽しみ方はたくさんあるんだ!」と読者の皆さんに知ってもらえたら嬉しいですね。
長田:暗い世界だけど、小さくてもへっちゃらだ! とばかりに三人が飄々と生きていくようなイメージ。絵本だとその部分を絵で補完して、読者の皆さんに色々な解釈をしてもらえるんです。ぜひ、それぞれ違った解釈をしていただきたいですね。絵本ってそういうものだと思います。
勝平:絵本って読者の想像力を掻き立てるところがスゴいですね! 言葉が分からなくても楽しめますし、海外へのおみやげにするのも面白そうです!
◆書きたいエピソードがたくさんある中で、一番絵本映えするキャラは◯◯◯◯!
勝平:もし、次回作があれば描いてみたいエピソードはありますか?
長田:『ONE PIECE』は物語が多角的で重層構造であるため、文学的な要素が強いと思っているんです。ただ少年マンガなので、その部分に強いスポットは当たらない。なので、もしも描かせていただけるなら、そんな魅力が詰まったエピソードを描いてみたいですね。アラバスタ編とか魚人島編とか…他にもたくさんあります。
勝平:ちなみに、長田さんの目から見た尾田さんの絵の魅力って何ですか?
長田:空間の描き方ですね。奥行きをリアルに感じさせる手法が、本当に天才的だと思います。あれだけ描き込んでいるのに絵はシンプルで、そのバランス感覚がすごいと思います。
勝平:絵本を読んだあとに『ONE PIECE』をもう一度読むと、新しい発見がありそうですね!
長田:あと絵本だと、ウソップっていい感じに描けると思います(笑)。ビジュアルと良い嘘つきエピソードといい、絵本向きのキャラクターですよね。
勝平:え、ホントですか! もし長田さんがウソップの絵本を描いてくれるならぜひ読んでみたいです!
長田:それと今回の絵本は、装丁もかなり良い感じにできたと思います。絵本ってインテリアとしても楽しめると思うので、ぜひ上手く使ってみてほしいです!
勝平:コミックとか雑誌みたいにオシャレですもんね。本棚に縦で入れておくのではなく、表紙を前にして飾っておくのもいいですね!
長田さん、バティさん。今日は興味深い話をいっぱい聞かせていただき、ありがとうございました!
勝平さん、長田さん、バティさんありがとうございました!『ONE PIECE』初の絵本『ONE PIECE picture book 光と闇と ルフィとエースとサボの物語』は好評発売中です。まだ読んでいない方はぜひゲットしてくださいね!