「『ONE PIECE』のフィギュアを作る原型師さんに突撃!」の巻

今日は、「裏造形王頂上決戦」なる大会が開催されているとのことで、その出場者の原型師、サイトウヒールさんと山口範友樹さんのお二人に話を聞きに来たぞ! わし、こういう造形もの好きなので、楽しみです!
しかし、何やらお二人の間には不穏な空気が流れているようで…?

勝平:サイトウさん、山口さん、よろしくお願いします!

サイトウ・山口(範):よろしくお願いします!

勝平:まずは、今回の「裏造形王頂上決戦」はどういうものなんでしょうか?

阪田:それは、私から説明します。

勝平:わっ!びっくりした!

阪田:初めまして。バンプレストの阪田と申します。よろしくお願いします。
まず、「造形王頂上決戦」はご存知ですか?

勝平:はい。毎年、年末くらいに開催されている大会ですよね?

阪田:そうです。『ONE PIECE』のキャラクターの中から、原型師に思い思いのフィギュアを製作してもらい、その順位を決める大会です。
山口さんは、2014年の「造形王頂上決戦Ⅳ」で優勝、ヒールさんはユースタス“キャプテン”キッドで特別審査員賞を受賞されました。
ちなみに、ヒールさんは1回目の「造形王頂上決戦」から連続出場し、初代・優勝者なんです。

勝平:お二人とも初出場で初優勝なんですね!

阪田:そうなりますね。
その大会が終わった後に、Twitter上でヒールさんと山口さんの意見が衝突しまして、それなら「裏造形王頂上決戦」という形で白黒つけてもらおうというのが始まりです。
いつもは、キャラクターはそれぞれに選んでもらうのですが、今回のお題は“サンジ”に決めさせていただきました。

勝平:どうしてサンジなんですか?

阪田:シンプルな形状なので、原型師の実力差がお客さんにわかりやすいかなと思いまして…
そして、今回は勝った方の原型にしか、色も塗らないし、商品化もしません。

勝平:1vs1のガチバトルなんですね。厳しい!

早速、お二人のサンジを見させていただくとして…
これは、どちらも甲乙つけがたいですね!平田(広明)さん喜ぶだろうなぁ。
今回のPRポイントとかこだわりを、お二人に聞いてもいいですか?

サイトウ:僕は、“造形王”と冠の付くもので計6体フィギュアを作らせてもらっているんですが、どれも激しいアクションポーズで作っています。今回も、今まで見たことのないようなアクションポーズを作りたいと思いました。山口さんの作品と見比べてもらうと、すごく対照的なんですが、作品のイメージやポージング含め、お互い自分たちの得意とするところを思う存分形にできたと思います。

(サイトウヒールさんの作品)

勝平:とっても対照的なんですけど、どちらも動きがあるところがおもしろいですね。
マンガのコマの1、2みたいな、アクションの前後というか…
動きの荒々しさを伝えようとする作品と、スタイリッシュで洗練されているけど、しっかり動いている作品…本当に両極端ですね。
山口さんはいかがですか?

山口(範):俺は、そうですねぇ。ポーズもかなり考えてるんですけど、どこから見てもおもしろく見えるようにしました。
右から見ても左から見ても、全体的に空間をうまいこと利用したいなって思うんですけど、タバコの先の灰をちょっとだけこぼれさせるみたいな、外す部分も入れてます。

(山口さんの作品)

勝平:灰がちょっとこぼれかけている。こ、細かい!
わしは、この角度(左横から)、好きですね。

山口(範):あとは、動きのスピード感も出したかったので、足先とか、チェーンの波とかの角度を何回も調整しました。

サイトウ:あ、それ、僕もそう。

山口(範):ホントっすか。(笑)

サイトウ:今回、特にこだわったのが決め角度。正面か右からの角度か、どっちかなんですけど…

勝平:正面かっこいいですね。

サイトウ:決め角度で袖の流れとか、全体のバランスはむちゃくちゃ考えてます。

勝平:見る角度によって随分印象変わりますね。
見れば見るほど、両方かっこいい!
これは投票する人悩むだろうなぁ。角度だけでも変わるのに、色付けたらまた印象変わるんでしょうね。でも、色付けられないんですよね。

山口(範):そうですね。だから、そこも考えて作らなきゃいけないんですよね。
原型だけで見せるわけだから、しわの入れ方ひとつとってもすごい考えます。

勝平:いや~、でも原型だけでこんなに個性が出るんですね。もしかしたら、原型が一番個性が出るのかもしれないですけど。

サイトウ:そうですね。出ると思います。
僕と山口さんは、仕事に対する考えとか、作り上げる作品の色とかも本当に対照的なんですよね。過去の“造形王”という大会には、たくさんの人が絡んでいるんですけど、これほど対照的なのってすごいなって思います。

山口(範):それは確かにそうだと思いますね。
“造形王”の大会の中で俺と真逆にいるのがサイトウさんなんですよね。
だから、サイトウさんの作品は認められないっていうか、やり方が違うんだろうなって思います。

勝平:そういうの考えたりするものですか?

山口(範):う~ん。俺は作っているものに関しては裏方だと思っているので、普段そこまで考えないんですけど、売られたケンカは買ってやろう、くらいな気持ちで。(笑)

勝平:な、なるほど。

山口(範):あとは、話し戻りますけど、俺はいちいちディテールに説得力をもたせたいんですよね。
ネクタイはこうしばっているから、こういう形になっているんだとか…

勝平:すごっ。裏までちゃんと作りこんである。

山口(範):靴ひとつとっても、こういう靴なら紐がないと成立しないと思うんですけど、じゃあ、ここがゴムだったら成立すると仮定して…とか考えちゃうんですよ。
フィギュアは、マンガやアニメと違ってお客さんが手に取れる距離に商品が行っちゃうので、説得力をもたせたいな、と常に思ってます。

勝平:それは、確かにそうですね。何となくわかります。

山口(範):だから、設定画からフィギュアにするときに、どこまでやっていいのか、いけないのかっていうのも考えます。

勝平:ほぉ~、なるほど。

山口(範):例えば、バックルから出ているベルトの部分とか設定画にはないんですけど、その部分がないのはおかしいとか、ベルトの巻き方が逆なんですけど、それもあえてそういう設定なのかとか思っちゃうんですよね。

勝平:わしも、ベルトの逆巻きは思ってました。
サンジはベルトの巻き方、間違えているんですね…
って、そういうことじゃないか。(笑)

サイトウ:リアルさを原型に落とし込みたいと思っている山口さんが、僕の作品を認められないっていうのも、わからなくもないですけど。
本当にどこを目指して作っているかが、僕とまったく逆なんですよね。

勝平:そうですね。
あ、わしが言っちゃいましたけど。(笑)

山口(範):でも、そういう風に思いますか?

勝平:原型を作るにあたって、どちらもリアルさにこだわってらっしゃるのは、ひしひしと感じます。
ただ、生地の質感とか縫い目とか徹底的にリアルにこだわる山口さんと、二次元のマンガをリアルに三次元に起こしたサイトウさんっていう、リアルさのベクトルが違うんですよね。

勝平:ちなみに作るのにどれぐらいかかるんですか?

サイトウ:他のものも同時に作っているので、厳密にはわからなくて。(笑)
よく、聞かれるんですけどね。

山口(範):でも、1か月ちょっとはかかっていると思いますよ。
ただ、あと1週間あれば、1週間やるとこあるなって考えちゃいますけどね。

勝平:絵描きさんと一緒ですね。どこで手を加えるのをやめるか考えないと、永遠に手を加えたくなるっていう…

山口(範):そうなんですよね。
商品に関しては納品日が決まっているんですけど、ぎりぎりまで髪の毛一本にまでこだわったりして、どこまで人に伝わるんだろうって思うんですよ。(笑)

勝平:でも、やっぱり世に作品として出すときに最初に満足しなきゃいけないのは、自分だと思うので、零点何ミリの世界にこだわるのは、すごいわかります。


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ワンピースオフィシャルメールマガジン『グランドライン通信』では、「裏造形王頂上決戦」に出場するお二人のPRポイントをお伺いしました!特別版では、表情やお二人の原型に対する思いを聞きました!


勝平:全体のイメージもですが、表情も対照的ですよね。
表情のポイントも聞いていいですか?

サイトウ:僕はまず、ドレスローザでドフラミンゴに軽くあしらわれて傷だらけになったサンジが、今どうしているのかなって考えました。
ビッグ・マム海賊団と戦っているかもしれない…

勝平:ちょうど会っちゃいましたもんね。

サイトウ:そういう状況の中で、ナミさんや仲間を守ろうとがんばっている男前なサンジを作りたかったんですよね。だから、恰好もあの時のだし、顔も2年後のサンジなんです。山口さんのは2年前のサンジなんですよね。

勝平:なんと!うかつにも気づきませんでした。

サイトウ:そういう選択というか、作品の雰囲気というかが僕の作品って異端だと思うんですよ。だけど、ポージングであるとか、シーンであるとかは、少年マンガの「アチョー!」っていうストレートなかっこよさにしたいんですよね。

勝平:うん。何か「ドンッ」という字が見えそうです。
表情もかっこいいのに、正面から見た時にちょっとしか見えないようにしているところとか、すごいおもしろいですね。
山口さんは2年前のサンジですけど、どうですか?

山口(範):俺は、強い敵に対してもサンジって余裕で戦う印象があるんですよ。だから、ちょっと口をにやけさせてみたりしてますね。

勝平:本当だ。口角上がってますね。

山口(範):サンジって、ノーモーションから強烈な蹴りを繰り出すから表情もそうなんですけど、上半身はなるべくモーションしないようにしました。

勝平:話しは変わりますが、先ほどもちょっと出ていましたが、お二人が目指すものって何ですか?

サイトウ:僕は、まず大前提として、原作やアニメファンなど誰が見ても「サンジだね」「かっこいいね」と言ってもらいたいっていうのがあります。ただ、その中で、僕なりにどう作ったら、このシチュエーションでサンジのキャラクター性を最大限生かせるかっていうことを常に考えてます。だから、このポーズも原作にはないんですけどね。

勝平:ちょっとデフォルメ的な要素も入れつつ、マンガを具現化するというか、迫力がありますよね。

サイトウ:ありがとうございます。
ディテールまで作りこむというよりは、最低限の作りこみにして劇画チックなしわの入れ方だったりを僕は強く意識していますね。

勝平:マンガを描くときに力の入れ具合で、線の太さが変わるみたいな感覚ですかね。
山口さんはどうですか?

山口(範):俺は、自分は商品原型の原型師だと思っているので、一番目指すところは商品が売れることですかね。お客さんがイメージする共通のかっこいいサンジに近づけたいっていうのが、望みです。ただ、それを作る過程でどうしても俺のテイストは入っちゃうと思うんですよね。
でも、商品原型ってことは常に頭にあるので、工場が生産しやすいように原型の空間が見えるところは別パーツにしたりしてます。

勝平:でも、その作り方だと一個で作りこむよりも余計に作らないといけない部分も出てきますよね?

山口(範):そうですね。ただ、例えばジャケットとシャツのすき間とかもちゃんと表現したいんですよね。だから、別パーツにしてます。

勝平:え、これ別パーツですか!?

山口(範):はい、別なんです。
だから、俺がサイトウさんの作品を見ると、まず「抜けないのに、どうするんだろう」って思っちゃうんですよね。
だから、本当にいい悪いではなく、目指しているものが違うんだろうなって思います。

勝平:そうですね。本当に、原型に対する姿勢とか考え方とか対照的ですね。
でも、今回は“造形王”ですから、パッと見てかっこいいと思った方に投票してもらえるとうれしいですよね。

山口(範):その通りだと思います。
結局、俺らの話なんて何でもないんですよ。(笑)

勝平:いや~、本当にこれは投票する人困ると思う。
わしもどっちって言われたらわかんないですもん。
どっちがいい、悪いじゃなくて、単純に自分の好みがどちらかってことですよね。

山口(範):そうなんですよね。
だから、結局キャラクター人気によるところも大きいと思うんですよね。

勝平:う~ん、そうですかね。
わしは前々回はセンゴクに投票しましたよ。
ただ、キャラ人気が高いものは、それだけ見る人も多くなるから有利なのかって言われれば否定できないですけどね。でも、前回のバギーとか「すごいな」って思うものたくさんありますから。

山口(範):原型師としては、キャラ人気はありながらも、それだけではないと思いたいですよね。

勝平:そうだと思います。
個人的には、もうどっちでもいいじゃないって思いますけど。(笑)
これをきっかけに、フィギュアに興味を持ってくれる人が増えたらうれしいですし、何より日本のフィギュアのレベルの高さを実感しました!

勝平:最後にお一人ずつ一言お願いします。

サイトウ:ストレートに男前なサンジを目指して、「アチョー!」という作品を作りました。応援よかったらよろしくお願いいたします。

山口(範):よろしくお願いします!

勝平:ここでも頂上対決は行われていた!ってことですね。
結果が楽しみです。
お二人とも、今日はありがとうございました!

サイトウ・山口(範):ありがとうございました!

山口勝平さんに応援メッセージを送ろう! みんなからの激励や要望を大募集!!

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