みんな元気か?
わしは、スタジオでアニメ『ワンピース』の収録後でございます。
TVアニメ『ワンピース』制作に欠かせない音響効果と選曲の
仕事について、くわしく聞いてきたぞ!
勝平:音響効果の新井秀徳さん、選曲の神保直史さん、よろしくお願いします!
(左から山口勝平さん、新井秀徳さん、神保直史さん)
新井&神保:よろしくお願いします。
勝平:まずはですね、アニメーション制作における、それぞれの仕事を教えてください。
新井:アニメーションは絵があるのを大前提に話をすると、あとは全部音じゃないですか。
声優さんの声があって、僕の作る効果音があって、神保君が選曲する音楽がある。
その3つでしょ?その3つが1つになって作品が出来上がるんだけど。
勝平:実際わしらがアフレコするときは、音楽も効果音も入ってない状態でやっていて、
それを最後にダビングっていう一緒に合わせる作業があって。
その時にお二方は活躍しておられる、と。
新井:そうです。それでたまに、アフレコの時にも絵が入ってない。
ダビングの時にも絵が入ってない事がある。これどういうこっちゃっていう(笑)
勝平:実際、絵が毎回必ずあるわけじゃなくて。
毎週やってかなきゃいけないから、絵がないときもあるんですよね。
そういう状態でも、効果音は作らなくちゃいけない。
新井:ね!ホントよ。キャリアキャリア(笑)
勝平:キャリア(笑) 新井さんは15年間アニメ『ワンピース』の音響効果を担当してますが、
いつぐらいからこの仕事をやってたんですか?
新井:20歳からやってるから、今年で38年目。
勝平:すげぇ~!最初のころはどういう作品やってたんですか?
新井:言いたくないけど……、言ってもいいのは『Dr.スランプ』から。
勝平:え!?昔の!?
新井:そうそう。『Dr.スランプ』やった後に『ドラゴンボール』やって、ほいで『Z』の後に…、『グーグーガンモ』があった!
『グーグーガンモ』がいっちゃんおもしろかったなぁ~
『ガンモ』は僕の渾身のギャグオンパレードやから聞きごたえあると思います。
勝平:音ってどうやって作るんですか?ビヨヨンとかも自分で作るんですか?
新井:ビヨ~ン!って音は「ジュズハープ」っていう楽器です。日本で言えば「口琴」、原理で言えばプラスチックのものさしとかをスキマに突っ込んでバーンって弾いたらビヨーンってなるでしょ?あれ。
勝平:へぇー!そんなやって作るんですか!
全部自分で作るんですね。
新井:いや全部じゃない。先輩が作ってきた基礎的な音もあるけど、それに僕が工夫したりとか。
ホンマにその決まりが一切ないのよ。シンセサイザーでゼロから作る音もあるけど、シンセの音と生音を一緒にミックスして作るのもある。『ドラゴンボール』の「ぼわぁーん」っていう球が光るときの音、初期の頃にしょっちゅう出てきたでしょ?あれはワイングラスに水張って手でおさえて、「ぼぇ~~~~~ん」っていう音を出して、それとシンセサイザーの倍音で合わせてんのよ。
勝平:いろんな技術がないと出来ないんですね。
新井:音感音感!だからよく楽器を弾かなあかん!
勝平:あ!でた!ウクレレ!
新井:これから音響効果を目指している人に言いたいのは、効果音やろう思ったら楽器弾けないとアカンやろな~
昨今ね、パソコンなるもんがあるからね。アレが良くないですよ。職人を作らなくなっちゃったから。
勝平:はぁー、デジタルがね。そうですね。
デジタルになって便利にはなったかもしれないけど、なんでもそこにあるから自分で工夫して作ったりとかなくなってきてますよね。
新井:ゼロから作ってないんだよね~。だからつぶしが効かへん。
勝平:じゃあ逆に、昔からデジタルじゃないアナログ時代からやってる人たちのほうがオリジナルの音を持ってるってことですもんね。
新井:そうやねんな。加工するのもテープで作るから。
勝平:そっか、テープだ。
新井:実際録った音をテープで回転数変えたりとか、逆にしたりとか、いろんなことをする。
本当に手作業やから。ほんで自分で聞いた感じで作っちゃうでしょ。
まずその音を聞いた時に発想がどんだけ色々出てくるのかが重要やと思うから。
だからやっぱり楽器はやってた方がいい。特に弦楽器は音楽の3要素の「メロディ」「ハーモニー」「リズム」を奏でる事が出来るからな!。弦楽器はやらないとアカンよ~。
勝平:みんな!弦楽器をまずはやろう!
そして神保さんはどんな風に選曲を…って、続きは特別編と後編でお届けだ!
いや~“音”って奥が深いですな。
ONE PIECE.com特別版!!
ワンピースオフィシャルメールマガジン『グランドライン通信』では、音響効果の新井秀徳さんのお仕事についてのお話をお届けしました。特別版では、選曲の神保直史さんのお仕事に勝平さんが迫りますよ!
勝平:選曲のお仕事ってどんなことをするんですか?
神保:そうですね。いただいた台本と画を見ながら、監督が考えた音楽ラインに合わせていくんですけど。
ここからここまでは「チンジャオが怒っている感じで」と指示がきたら、音楽を選んで指示された場所に入れていくという感じでしょうか。
勝平:ほぉ~。指定は口頭ですか?
神保:指定はこの紙ですね。
曲の内容が書いてある紙に合わせて、田中公平さん等の作曲家の方達につくっていただいた音楽を選び、組み合わせたりしています。
勝平:作曲家の方達に曲のオーダーをするときはどういう風にオーダーしているんですか?
神保:普通は大体テレビのレギュラーものだと、50曲くらい書いてもらいますね。
勝平:一番最初に頼んで書いてもらうんですね。
神保:サブタイトルであったり、アイキャッチであったり、例えば朝・昼・夜のテーマくれーとか。ルフィのテーマ、ウソップのテーマくれーとか。
『ONE PIECE』開始の時はアイキャッチが全員違ったじゃないですか。
だからその分全部くれーとか。そんな風にオーダーしてます(笑)
勝平:(笑) やっぱり『ONE PIECE』みたいに10年以上で長くなってくると、
話が進んでいく中で追加もありますよね?
神保:多少追加はありますね。
勝平:追加するのはその都度その都度?
神保:そうです。『ONE PIECE』の場合、実は追加は少ない方で、劇場版の音楽も使っています。
勝平:あ、なるほどなるほど。ドレスローザ編ならドレスローザ編とか、そういう新しいエピソードが始まるときに、新しいエピソード毎の曲をまとめて作ってもらうっていうわけじゃないんですね。
神保:例えばローのテーマが欲しいとか。そういう場合もあります。
勝平:そっか!新キャラが出てきたらそうですね!
神保:そうそうそう。
勝平:藤虎とかも?
神保:あのおっちゃんのテーマ欲しいとか、偉いドンキホーテさんのテーマほしいとか。あと、フラメンコと。どうしても踊るから曲がほしいとか。まぁそんな感じですかねぇ。
勝平:その出来上がった曲を、演出家の指示に従って選曲してはめ込むと。
神保:そうですね。東映アニメーションは、たぶん実写の形で制作しているから、特殊なんですよね。
台本の中でここからここまではこのイメージの曲を入れるという音楽ラインは演出家が決めて、どういう曲にしようかと選ぶのは僕。そしてはめ込む。
他のアニメ会社だと、例えば僕が音響監督をやると、自分で音楽ラインを決めて自分で仕込んで…みたいにやるんですけど(笑)
勝平:そうですね、映画の作り方ですね。
ちょっと特別っちゃあ特別なんですね。
神保:『ONE PIECE』は特殊ですね。
興味深いお話ありがとうございました。
まだまだ、新井さんと神保さんの制作秘話は続きますよ!
後編をお楽しみに!