
2025年8月よりオンエア中の新オープニング主題歌『カーマイン』を手がけたのは、21世紀のロックシーンをリードし続ける4人組バンド・ELLEGARDEN。バンド史上初となるアニメ主題歌を引き受けた理由から、楽曲制作の舞台裏まで、メンバー全員にインタビュー!!
「週刊少年ジャンプ」2025年44号のお宝情報コーナー「グラばこ」に掲載されたものに、誌面の都合でカットした話も余さず収録した〝完全版〟をお届けします!!
ELLEGARDEN(エルレガーデン)
ほとんどメディアに露出しないストリート系のバンドながら、圧倒的なライブと楽曲のクオリティで人気を集めてきた、日本のロックシーンを象徴する4人。
メンバー:細美武士(ボーカル&ギター)、生形真一(ギター)、高田雄一(ベース)、高橋宏貴(ドラム)
アニメ主題歌は俺にとって特別なもの
――主題歌のオファーが来た時、どう思いましたか?
細美:俺は『ONE PIECE』が元々大好きだったので、とにかくうれしかったです。
生形:細美さんからメンバー一人一人に電話がかかってきたんですよ。わりと冷静な感じで「こういう話があるんだけど、どう思う?」みたいに訊かれて。今思えば、細美さん自身は最初から「絶対やりたい!」って気持ちだったんじゃないかと思いますけど(笑)。
高田:細美さんから直電が来ること自体あんまりないので、何事だろう!? ってびっくりしたのは覚えてます。
生形:俺もそうだし、たぶん全員が即答でOKしたんじゃないかな。
高田:そうですね、「もちろんやりましょう!」って。
高橋:俺は自分がどうこうというより、〝『ONE PIECE』の主題歌をやる〟ということに対して、バンドの温度がグンッと上がった感じがすごくしたんです。それにすごくワクワクしました。
――ELLEGARDENにタイアップの印象があまりなかったので、『ONE PIECE』の主題歌を担当されると聞いて驚きました。
細美:既発曲を番組やCMで使って頂いたことはありますけど、主題歌として一から曲を書きおろしたのは初めてでしたね。
生形:今までやったことがなかったからこそ、挑戦しがいもありました。
細美:そうだね。あと俺、アニメの主題歌には特別な思い入れがあって。幼少期に見ていたロボットアニメのオープニング曲やエンディング曲が、今でも自分の音楽の大切なインスピレーションになってます。自分が見ていた頃のアニメ主題歌ってオリジナル曲がほとんどで、歌詞も曲も子ども向けっていうよりは本気で書かれたものが多かった時期なので、めちゃくちゃカッコ良かったんです。中でもMIOさん(現MIQ)という方の歌が、信じられないほどの表現力で今でも大好きですね。いい曲ができなくて行き詰まった時に、『聖戦士ダンバイン』のエンディング(『みえるだろうバイストン・ウェル』)とかを何度も聴いたりしています。
そんな俺にとって特別なものであるアニメ主題歌を『ONE PIECE』で担当させてもらえることは、25年のキャリアの中でも最もうれしかった出来事のひとつです。夢が叶った思いがしました。
カーマインは戦場の〝濃い赤〟のイメージ
――主題歌を作るにあたり、最初に考えたことは?
細美:まず、『ONE PIECE』の一番コア(核)のテーマは何かを考えました。そこを外したくなかったし、それが見つからないと曲が書けないとも思ったから。もちろん「仲間」とか「友情」とかも大事なテーマだと思うんですが、自分なりにもっと掘り下げてみたかった。それで自分が『ONE PIECE』のたくさんのエピソードに共通して感じることを考えていくと、数が多いもの、権威をかざすもの、間違っているシステムといった、簡単には歯向かうことができないとされているものに対して、抗っていく強い意志と覚悟――それがコアじゃないかと思ったんです。
自分の命とか夢とか安定とか、のんびりした生活とか、全部を犠牲にしても構わないという強い覚悟があってこそ、市井の人たちでは抗いきれないものに対しても、ルフィたちは抗うことができる。『ONE PIECE』は少年漫画ですけど、そこはちゃんとシビアで、頑張ればすべてが上手くいくみたいな甘ったるい世界じゃないんですよね。誰かを守りたかったら、そのぶん犠牲にするものも出てくるよねというところまで描かれている。そこはしっかり曲に込めたかったです。
――曲作りはどのように進めていきましたか?
細美:まず俺が曲を書いて、メンバーみんなで編曲していくんですけど、今回は『カーマイン』が1曲できるまでに、60曲くらいボツにしてるんじゃないかな。
――そんなにですか!?
細美:とにかくいっぱい曲を作って、みんなで何度もスタジオに入って、「今7~8曲できてるけど」っていうのを聴いてもらったり、これは編曲したらもっと化けるかもねっていうのを試してみたり……ああでもないこうでもないって3か月くらいやってました。事前にアニメサイドから「アップテンポで、日本語の歌詞で」というオーダーは頂いていたから、スローなバラードとかは書いてませんが、アップテンポな中でも激しい曲からポップな曲までいろんなパターンを作って、ひたすらトライ&エラーを繰り返してましたね。
生形:それでもなかなかコレだ! という決定打が出なくて…。
細美:俺、自分の言葉で覚えてるのがさ、さんざんやっても全部納得いかなくて、スタジオでポロッと「誰か助けてくれ…」って思わずつぶやいてた(笑)。そのくらい限界まで自分を追い込んでましたね。
生形:みんなで集まらない日も、細美さんは毎日スタジオで曲作りをしてるんですよ。何日かに1回、深夜に、メンバー4人のグループLINEに「こんな曲できたよ」ってデモが送られてくるんです。そろそろ曲ができてないとまずいっていう結構ギリギリのタイミングで、ある日『カーマイン』のデモが送られてきて、みんな「これだ!」ってなりましたね。
高橋:一発で「めちゃくちゃかっこいい!」と思いました。
高田:これしかないって感じでしたね。
細美:それですぐにみんなでアレンジしていって、そこから歌詞を書いていきました。いつもは英語詞で曲を作り始めて、その中で日本語になりそうなものだけみんなが歌いやすいように日本語に変えていくんです。だけど今回は「日本語の歌詞で」というオーダーありきだったから、メロディを思い浮かべる時から、日本語の仮詞で作っていきました。俺の中ではめずらしいパターンというか、初めてかもしれません。歌いだしの「手に取って」とかは、最初のでたらめな歌詞の時の言葉がそのまま完成形に残ってます。
――歌詞を書くうえで意識したことは?
細美:さっきの「何かを引き換えにしてでも戦う覚悟」というコアのテーマも踏まえつつ、もう1つ意識したのが「誰目線の歌詞にするか」ということ。この曲が使われる〝エッグヘッド編〟終盤の物語には、ルフィ、ボニー、くまの3つの主人公目線があるなと思って。なら、3人に共通する視点を歌詞に描いたほうがいい。3人の誰を思い浮かべながら聴いても、重なるような歌詞にすることを心がけました。
――『カーマイン』というタイトルに込めた思いも伺えますか?
細美:激しい戦闘シーンも多いし、ボニーやくまの壮絶なバックグラウンドが交錯するクールの主題歌ということで、平和を壊していく色、戦場の色…といったイメージで「赤」をピックアップしました。ポップな明るい赤ではなくて、まさに『カーマイン』のジャケットみたいな濃い赤(※カーマインは「洋紅色」「深みのある赤色」の意味)っていう。『ONE PIECE』全体を象徴する色は、もっと明るくて総天然色の夏っぽい色かなと思うんですけど、それが濃い赤にベタッと塗りつぶされていくようなイメージで、最初のAメロの歌詞は書いています。

今までの俺たちのどれにも似てない曲ができた
――完成した楽曲に対して、皆さんの手ごたえをお聞かせください。
細美:今言ったような思いが『ONE PIECE』ファンに伝わってほしいのはもちろんですし、同時にELLEGARDENのファンにとっても、新しい耳ざわりを感じてもらえる歌詞が書けたと思ってます。最初から日本語で書いたのも大きいですが、これまでのELLEGARDENの日本語詞にはあまりなかった散文的なスタイルというか、行と行がきちんとつながっていない書き方をしているので。
サウンドに関しても、最近はずっとロスでレコーディングをしてたけど、『カーマイン』は久しぶりに日本でレコーディングしました。ロスで得た経験を日本のレコーディングにも活かせたサウンドになっているので、そこも楽しんでもらえたらと思います。
生形:俺はバンドのギタリストとして、常に新しいことをやりたい気持ちがあります。昔からそうでしたけど、ELLEGARDENが活動再開して以降は特に、その気持ちがますます強くなってるんですよ。活動再開後に出した前作『The End of Yesterday』がすごく満足のいくものを作れたからこそ、その先さらに新しいもの、もっと自分たちがいいと思えるものを作るのは、めちゃくちゃしんどいだろうなと思っていました。『カーマイン』はそれができましたね。
細美:『カーマイン』が完成した時、ウブ(生形さん)が言ってたよね。「今までの自分たちの曲のどれにも似てない、でも自分たちらしい曲ができた」って。俺もそれは確かにと思った。
生形:本当にそうです。こうして新しいELLEGARDENの音楽が完成して、それに自分たちが100%満足できていることが一番うれしいですね。
高田:僕も『The End of Yesterday』を2022年に出して、まだしばらくELLEGARDENの制作はないかなと思っていた時にこういう機会を頂けて、すごく新鮮に取り組めましたし、バンドの新曲を出せることがうれしいです。
高橋:俺はね、今回、ドラムの録りが遅い時間帯だったんですよ。昔の俺たちのレコーディングではドラムを最初に録って、その後ベース、ギター、ボーカルと進んでいくのが常識だったけど、『The End of Yesterday』をロスで録った時、ドラムが最後だったんです。さっき細美さんが「ロスでの経験を日本のレコーディングにも活かした」と言ってましたが、それで『カーマイン』もドラムを最後に録るようにしました。最近の俺は寝るの早いから、眠くならないようにすごく集中して…。
(一同笑)
高橋:いやいや、ほんとに。深夜0時くらいの録り時間に自分のピークを持ってこれるように、血糖値が上がると眠くなるから食事の量を調節したりとか、めちゃくちゃ緻密に考えてレコーディングに臨みました。
細美:実際すげー早かったよね、ドラム。3テイクくらい?
生形:うん、そのくらいで録り終わってましたね。
細美:集中力すごかったもん。見ててカッコよかったですよ。
――ドラムを最後に録ると、どう違うんでしょうか?
高橋:ドラムの音ってパワーがあるから、少し変えるだけで楽曲全体の聴こえ方がガラッと変わっちゃうんですよね。先にドラムを録ると、そのドラムの音に合わせて他の音を作っていくことになります。そうではなくて、まず楽曲の中心にあるべき歌やギターやベースの音を先に決めて、それに後からドラムのサウンドを合わせていくほうがいいねと。
細美:サウンドは時代に合わせて変わっていくものだから、バンドやってる人間はどうしても時代に適応していかないといけない。流行りを追っかける必要は全くないんですけど、リスニング環境は変わり続けるので、常に一番カッコイイ音を出していたくて毎回いろんなやり方を試したり、取り入れたりしています。
『ONE PIECE』との出会いは…
――ここで改めて、皆さんと『ONE PIECE』の出会いを教えていただけますか?
細美:たしか2000年くらいだったと思いますけど、友達とシェアハウスしてた時期があって、その友達の本棚に最新刊まで揃ってたんです。当時10~11巻くらいだったかな。それを読ませてもらって、ガツンとやられました。その時に読んだ、ナミに助けを求められたルフィが「当たり前だ!!!!!」って叫ぶシーン(コミックス9巻 第81話)は、今でも一番好きなシーンですね。無骨な男の正解を描いてるなって感じました。
好きなキャラクターも昔は即答でルフィだったけど、自分が歳を重ねるにつれて、最近はシャンクスがどんどん順位を上げてます(笑)。バンドを続けていく中で、いつもたくさんの人と仕事をしたり、自分がフロントマンとして前に出ることも多いのでそういう時、シャンクスのような余裕と貫禄のある強い〝頭(カシラ)〟でありたいなと思っています。だから今はシャンクス推しです。
――細美さんがシャンクスだとすると、麦わら帽子を預ける相手は誰なんでしょう?
細美:俺から預ける、なんて偉そうには言えないですけど、かっこいい後輩はたくさんいますよ。
生形:俺は『ONE PIECE』が始まった頃ジャンプを毎週買ってたから、1話からジャンプで読んでました。今、細美さんの話を隣で聞いてて、つくづく俺ってギタリストだなと思ったんですけど、俺が魅かれるのはルフィやシャンクスみたいな船の中心人物より、圧倒的にゾロとかサンジなんですよ。考えてみたら『ONE PIECE』に限らず、どの漫画でも主人公より、その右腕ポジションのキャラを好きになるんで、やっぱり自分とどこか重ねて見てるのかもしれないですね。
好きなシーンは、ウソップが村を海賊たちから救った後、ウソップ海賊団のメンバーに「今…ここで起こったことを全部 秘密にできるか?」って言うところ(コミックス5巻 第40話)。全部ウソで、最初から何もなかったことにしようっていう、あれはカッコイイなと思いました。
高田 僕は昔マクドナルドでアルバイトをしていた頃に、若い子たちが『ONE PIECE』の話ですごく盛り上がっていたのが最初の印象ですね。その後自分も読み始めて、正直に言うと〝空島編〟までで止まってるんですけど、マヂカルラブリーの野田クリスタルさんがYouTubeで『ONE PIECE』の考察をやってるじゃないですか。それは今でもずっと見てます。
――本編は止まってるのに?
高田:なんかずっと見ちゃうんですよね。野田さんが「カマキリ(空島編に登場するシャンドラの戦士)ラスボス説」というのを言ってて、本当にそうなのかなーって今もワクワクしてます(笑)。
高橋:俺は非常に申し訳ないことに、普段まったく漫画を読まないんです。ジャンプも買ったことないし、人生でハマったのがドラムと(活字の)本だけという人間で…。だからすみません、今回がいい機会で楽しみが増えたと思って、これから絶対読みます!
ELLEGARDENの音楽も『ONE PIECE』のようにありたい
生形:今回のお話を頂く前から、事あるごとにバンドの中で『ONE PIECE』の話題って出てたんですよ。それこそ〝麦わらの一味〟というのも、引っぱる役目の船長がいて、他のメンバーもそれぞれ役割があって…というのがバンドっぽいなと思うし。それは俺らに限らず他のバンドもそうだし、バンド以外の職業にも通じるところはあるんでしょうけど、特にELLEGARDENというバンドのストーリーと『ONE PIECE』って重なる部分が多い気がしていて。
細美:昔ね、高橋が短髪で金髪だった頃、ゾロそっくりだったんです。ウブも今より髪が長くて、めっちゃサンジに似てて。そうなると雄一(高田さん)はウソップか…? みたいな話をよくしてたよね。
高田:言われてました(笑)。
細美:ELLEGARDENと『ONE PIECE』が特に重なるなと思ったのは、俺らが2008年に活動休止した時。その直後に〝麦わらの一味〟も、くまに飛ばされてバラバラになったんです。だからあのへんはすごくリアルタイムにリンクを感じながら読んでました。キャラも似てるし、同じ時期にバラバラになるし。
――でも〝麦わらの一味〟は2年後に再集結しましたが…。
細美:俺らは10年かかりました(笑)。あと共通するなっていつも思うのが、人間って普通「AとBどっちにします?」と聞かれたら、どっちかを選んじゃいそうになるんだけど、〝麦わらの一味〟や俺たちは「AもBもいらない」とか「Cがやりたい」って言っちゃうタイプなんですよね。そういう生き方を貫くのって、けっこう馬力がいるし、敵も多く作るからすごく大変なんです。心が折れそうになる時もある。『ONE PIECE』はそんなしんどい時に「お前はそのまま突き進めばいいんだ!」って全肯定してくれるような物語だと思うし、ELLEGARDENの音楽も同じように、心が折れそうな人たちの背中を「負けるな、突き進め」って蹴り飛ばすようなものでありたいと思っています。
『ONE PIECE』を読んで「でも漫画でしょ?」っていう人もいると思うし、ELLEGARDENの歌詞にも「こういうこと言うだけなら簡単だよね」って思うかもしれない。だけど俺たちも、きっと尾田先生も同じだと思いますけど、リアルな人生の中でこれをやってるわけで、そこは全部が創作じゃねえんだよっていう思いはありますね。だから『カーマイン』を聴いてくれた人が、この曲からパンチを受け取ってくれたとしたら、その衝撃や衝動をみんなの日常にもぜひ活かしてほしいと願ってます。
――そういったお話や共通点を聞いてみると、もっと早くにELLEGARDENが『ONE PIECE』の主題歌を担当していてもおかしくなかった気がしますね。
細美:うーん、でも今がベストだったと思います。
――というのは?
細美:俺は、今が自分のキャリアのピークなんじゃないかと思ってます。歌も作曲も。ここから先、長くやりたくないわけじゃないけど、今みたいに一番炎が燃えている状態にはいつか終わりが来るものだと思うので。そんな時に今回のお話を頂けたから、曲作りも限界まで自分を追い込むことができたし、そういう命懸けをするのに見合うだけの重たさや厚みが、今の俺たちには若い時より絶対にあるから。もしこれが20年前ならもっと腰の軽い曲になっていただろうけど、今だから『カーマイン』という曲が書けたんです。バンドとしての強さも、活動休止前より今のほうが圧倒的にあると思うので、最高の状態で曲を完成させることができたと思います。
『カーマイン』は俺たちのキャリアの中でも大きく残っていく曲になるはずだから、この曲を作れて、今『ONE PIECE』の主題歌としてみんなに聴いてもらえることが、本当に良かったと思ってます。
TVアニメ『ONE PIECE』OP主題歌『カーマイン』ノンテロップ映像はこちら!

ELLEGARDEN『カーマイン』
TVアニメ『ONE PIECE』
- 放送日時:
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毎週日曜23:15~23:45
- 放送局:
-
フジテレビ系全国ネット
(C)尾田栄一郎/集英社・フジテレビ・東映アニメーション